インボイス登録の取りやめ(取消・失効)について

まえがき

2023年10月1日のインボイス制度開始に向けて、多くの事業者が9月までにインボイス登録を実施しようとしているところかと思いますが、一度、インボイス登録を実施した後に登録を取りやめることが出来るのか気になる方も多いのではないでしょうか。

また、インボイス制度開始に向けて、仕入先や購買先のインボイス登録番号の有無を確認したものの、確認後に取引先が登録を取りやめることがあり得るのか気になる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、インボイス登録の取消に関するルールおよび手続きついて解説します。

0. 目次

  1. インボイス制度の概要
  2. インボイス登録を取りやめることってできるの?
  3. インボイス登録の取りやめが行われる可能性
  4. インボイス登録の取りやめにあたって必要な手続

1. インボイス制度の概要

インボイス制度とは

インボイス制度とは、複数税率に対応した新たな消費税の仕入税額控除の方式で、2023年10月1日から開始されます。インボイス制度開始後に仕入税額控除を受けるためには、仕入先や購買先から適格請求書(以下「インボイス」)を受領し保存する必要があります。

インボイス登録とは

インボイスは誰でも発行できるわけではなく、適格請求書発行事業者(以下「インボイス登録事業者」)として国税庁に登録した事業者のみ発行することが出来ることとされています。
事業者がインボイス登録事業者になることを一般的にインボイス登録と呼んでいます。

2.インボイス登録を取止めることってできるの?

インボイス登録を行うかどうかは、事業者が任意で決めることができることとされています。
インボイス登録・インボイス登録の取りやめを、インボイス制度開始前・後のどちら行いうるかをパターン分けすると下表の通りです。

インボイス制度開始後にインボイス登録を行うことも、登録を取りやめることも可能です。
また、インボイス制度開始前にインボイス登録を行ったものの、インボイス制度開始前にやっぱりインボイス登録申請を取り下げることも実務上可能となっています。

パターン インボイス登録可能なタイミング インボイス登録取りやめ可能なタイミング
a インボイス制度開始前 インボイス制度開始後
b インボイス制度開始後 インボイス制度開始後
c インボイス制度開始前 インボイス制度開始前

3.インボイス登録の取りやめが行われる可能性

事業者がインボイス登録を行う動機は通常、以下のいずれかであると考えられることから、インボイス登録の取りやめはそう頻繁に起こる事象ではないと考えられます。
特に一定規模以上の事業者においては、通常、インボイス制度開始前にインボイス登録を実施後、半永久的にインボイス登録事業者としてのステータスを維持することが考えられます。

  • 得意先が自社に支払う仕入代金等をインボイス制度のもとでも仕入税額控除することが出来るようにすること
  • 得意先との取引を維持・継続すること

一方で、比較的小規模な中小法人や個人事業主(以下「中小事業者」)については話が違います。
中小事業者は例えば以下の理由から、インボイス登録を取消す可能性が多いにあると考えられます。

  • インボイス登録を行うと事業規模に拘わらず須らく消費税の確定申告義務が生じること
  • 確定申告に向けて従前よりも複雑な経理処理を要する場合があること
  • 確定申告によって今までは不要だった納税を要すること
  • 確定申告をリーズナブルなコストで引き受けてくれる税理士を見つけられない可能性があること

なお、事業の廃止や合併により法人が消滅することで、インボイス登録が失効する事業者が出てくることもありえます。

4. インボイス登録の取消にあたって必要な手続

登録取消届出書の提出

インボイス登録事業者は、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」(以下「登録取消届出書」)を税務署長に提出することにより、インボイス登録の効力を失わせることができるとされています。

登録取消届出書の提出時期

翌課税期間の初日からインボイス登録の効力を失わせたい場合には、翌課税期間の初日から起算して15日前までに登録取消届出書を提出する必要があります。当該期限を過ぎた後に届出を行った場合には、翌々課税期間の初日までインボイス登録の効力が継続してしまうことになるため注意が必要です。

なお、インボイス登録にあたって「課税選択届出書」を提出している事業者がインボイス登録の取消を行う場合であって、インボイス登録の取消後の期間において、事業者免税点制度の適用を受ける(免税事業者となる)ためには、上記に加えて「消費税課税事業者選択不適用届出書」を課税期間の初日の前日までに提出する必要もあるため留意が必要です。

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