(1)消費税の計算方法
消費税の申告義務は原則として、課税期間の「基準期間」(個人は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高が1,000万円を超えた場合に生じます。(※1)
申告義務が生じた場合には、申告期限までに消費税の申告納税をする必要があり、その税額は下記の計算式で行います。
なお、消費税の計算方法には「本則課税」と「簡易課税」の2種類があり、事前に税務署へ届出書を提出しておくことで「簡易課税」を選択することが可能です。
また、「簡易課税制度」は基準期間における課税売上高が5,000万円以下である場合のみ選択することができます。
本則課税:売上消費税額 ー 仕入消費税額(仕入税額控除) = 納税額 or 還付額
簡易課税:売上消費税額 ー(売上消費税額 × (※2)みなし仕入率)= 納税額
(※1)その他にも特定期間(個人は前年1月から6月、法人は前事業年度期首から6カ月の期間)における課税売上高及び給与支払額の合計額が1,000万円を超えた場合も課税事業者になります。
その他、消費税の課税事業者判定は複数ありますので、下記を参考にしてください。
「No.6501 納税義務の免除」|国税庁
「No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」|国税庁
(※2)みなし仕入率は業種により、控除率が異なります。
「No.6509 簡易課税制度の事業区分」|国税庁
(2)インボイス制度開始による影響
現行は上記の計算方法により消費税の計算を行いますが、インボイス制度開始後は、インボイス登録をした事業者にのみ付与される「インボイス登録番号」が請求書や領収書に記載されていないと、買手側の事業者は仕入税額控除を受けることができなくなります。
但し、経過措置として仕入先がインボイス登録番号を取得していない事業者であったとしても、令和5年10月1日から令和8年9月までの3年間は80%、令和8年10月から令和11年9月までの3年間は50%の仕入税額控除の適用を受けることができます。
また、これに対応するべく免税事業者が自らインボイス登録事業者になることを選択して消費税の課税事業者となった場合は、売上消費税額の2割相当額を納税する「(※3)2割特例」という計算方法を選択することが可能となりました。2割特例の適用を受ける場合は届出書などの提出は不要であり、申告時において申告書に「2割特例適用」と記載するのみで適用可能となります。
(※3)2割特例は、売上消費税額のみを用いて納税額を計算することになるため、本来であれば仕入消費税額の詳細な区分は不要です。但し、2割特例は申告時に選択することでその適用を受けることができるため、決算が終わるまではいずれの計算方法が有利であるかは分かりません。そのため、決算が終わるまでは正しい消費税区分で会計処理を進めておく必要があるでしょう。
なお、選択適用できるのは、本則課税 or 2割特例、または簡易課税 or 2割特例となるため、事前に本則課税と簡易課税どちらが有利となるかを検討して届出書提出の有無を判断し、決算時に計算方法を選択するという流れになります。
その他、令和5年度の税制改正により下記の経過措置が設けられています。
【インボイス事務の負担軽減措置】
下記の要件を満たす事業者は、税込1万円未満の課税仕入についてインボイスが不要となりました。
- 基準期間における課税売上高が1億円以下であること
- 特定期間における課税売上高が5,000万円以下であること
【少額な返還インボイスの交付義務免除】
税込1万円未満の返還インボイスの発行が不要となりました。
なお、返還インボイスとは、例えば、代金支払時に振込手数料等が差し引かれて振り込まれることがありますが、この差引かれた金額が値引扱いとなり、当該値引に関するインボイスのことを言います。
(令和5年10月1日以後の取引について適用)
【インボイス登録事業者申請手続き期限の緩和】
インボイス登録事業者申請書の提出期限は「課税期間の初日から起算して1カ月前まで」とされていましたが、改正により「課税期間の初日から起算して15日前まで」になりました。
また、申請期限について当初は令和5年3月31日までとされており、困難な事情の記載がある場合に限り柔軟に対応することとされていましたが、さらに柔軟化され、困難な事情の記載がない場合でも登録申請書が受理されることとなりました。
(令和5年4月1日以後に提出される申請書について適用)